ターミネーター2風の煙、五井の工場萌えを撮る。

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工場萌えする五井の化学工場夜景。

2023年01月08日 22:04千葉県市原市五井(ごい)南海岸南地区石油化学工場付近にて撮影。

工場燃えか、工場萌えか。

光の宮殿みたいな工場の灯。
光の宮殿みたいな工場の灯。

「工場萌え」という言葉。以前からとても気になっていました。うんと昔ではありますが、「工場が“燃える”のはわかるが、“萌える”ってどういう意味だ?」とちょっと誤解してた頃さえありました。(笑)

ところが、巷の数々の写真集やサイトを見た時、シャンデリアの宮殿のような照明にとても驚きました。それまで、夜の工場がこれほどの灯で照らされているとは全く知らなかったのです。

若き頃の「なりゆき撮影」では「半遭難」してしまう。

「自分も遅まきながら、撮ってみよう。」そう決めたものの、まずは「どこにするのか?」「何がポイントなのか?」「どう移動するのか?」を決めておく必要があります。特にルートとスケジュールの「戦略」が重要です。若い頃は、寒い冬でも、全くノープランで気まぐれに徹夜で歩きどおしで撮っていました。

その頃はスマホどころか、携帯電話さえなかった時代です。それでも、地図さえ持たず、調べず、勘で歩いても平気で始発で帰れていました。しかし、アラカンの今の私の身体では、下手すると命にかかわります。こんな季節の冬ならなおさらです。勘で歩くのは、たしかにスリルがあって楽しいこともあるのですが、歳と体力、気力を常に考えておかなければなりません。

20〜30代の頃は「ターミネーターT-800」のように「予備エネルギー」が発動できたのですが…。加齢を重ねると、肝臓にエネルギーとして貯めているグリコーゲンのストックが情けないほどすぐ無くなるのがわかります。(なので、最近ではカロリーメイトやインゼリーの携帯は必須です。都心部でも、コンビニや自販機が見つけられず、“半遭難”という経験がある私…。)

ですから、この歳になってしまうと、いくら面白い夜景でも、夜の撮影はとにかく要領よく、効率的にこなしたい。そして、できれば終電でも構わないので、その日のうちに帰宅して、暖かい風呂に入って、布団にすっと入って眠らなければなりません。もちろん、遠方の地方では現地に泊まりますが、都心部では、経費をできるだけ節約したいので、宿泊や徹夜はあくまで「非常案」としていました。

五井駅着はなんと21時。

なのに、なのに、そんな教訓はどこへ行ったのでしょう!今回、最寄りの五井(ごい)駅に着いたのは、なんと21時!でした。昼間に千葉県の磯根崎海岸を撮った帰りに、妙に体力も気力も残ってるように錯覚して、ついこんな時間に寄ってしまったのです。

しかし、これはどう見ても無謀でした…。駅から工業地帯までは、さらに歩きで1時間近くかかったのです。五井(ごい)の工業地帯に来てしまったのは、行きの磯根崎海岸に向かう電車の中で、蘇我の工業地帯が見え、妙に気になってしまったことがそもそものはじまりです。ところがサイトで調べていくうち、「どうも蘇我よりも五井の撮りやすいのでは?」という予感がして、急遽ここに変更したのでした。

化学工場の煙は水蒸気なのか、事故ではないような…。

…というワケで、カットは千葉県五井の化学工場の夜景です。工場を照らす灯の中を水蒸気と思われる煙がもくもくと舞い上がっていました。もう「ターミネーター、T-800」が、登場してきそうな光景でした。煙のボリュームは二階から屋上までを余裕で包み込んでしまっています。工場の水蒸気って、こんなに漏れるものなのでしょうか?もともとこういう仕様の工場なのでしょうか?これまで煙突や配管からの水蒸気ぽい煙を撮った経験はありましたが、こんなとてつもない量は見たことがありませんでした。

不安がよぎりました。「もしかして、これは何らかの事故とかじゃないのか?」と。しかし、それにしては排出時間がどうも長すぎるような気がします。むしろ「今日も絶好調だぜ、もくもくと出してるぜ。」と言わんばかりの姿にも見え、のんびりした気配さえ漂っているのです。これが万一事故だったら、何はさておき、少しでも離れたところへ逃げなくてはなりませんが、サイレンとか非常ベルも聞こえず、白い無臭の煙はひたすら出続けています。

「た、たぶん火事ではないよね、単なる水蒸気だよね…。きっといつもこうなんだよね…。」と、自分に言い聞かせ、落ち着かせてシャッターを切りました。工場の敷地には当然入れませんから、数十メートル離れた外側の道路から電柱にもたれ、ぶれを最小限に抑えることに気を配りながら撮りました。

煙の輪郭表現をシャッタースピードで調整。

実は相当な暗所。電柱に身体を沿わせて撮影。
ここも相当な暗所。電柱に身体を沿わせて撮影。

液晶のプレビューで確認します。すると、いつもの夜景撮影とは違った設定に変えないといけないことに気付きました。「シャッタースピード」です。すべてが静止している建物だけの場合は、1/4秒とか1秒とか、かなり遅めのシャッタースピードでも撮れるのですが、ここで問題になるのは「水蒸気の動き」でした。ふだんのシャッタースピードでは、水蒸気の輪郭がふやけるように写ってしまっているのです。これでは霧とかもやのようになってしまい、工場から排出していることを理解してもらえません。ある程度早めのスピードで撮り、それなりに輪郭を捉えた表現にする必要があると考えました。

ちょっと速めの設定にしてみます。1/8秒?う~ん、まだまだ。どうやら1/15~1/20秒位の様です。こういう風にその場で色々試せるのもデジタルカメラの利点ですね。シャッターチャンスが重要な場合は、こんな試行錯誤は許されず、「とにかくシャッターを切らないと!」という状況に追いやられるのですが、今回の場合は、じっくり試すことができました。

もちろんもっと早いシャッタースピードも可能だったのですが、そうなると今度はISO感度を上げる必要が発生し、粒子が荒れてきます。この時点でもすでにISOは1250でしたからさすがにここらあたりまでに抑えたいと考えました。

私の愛機のOM-1では、もっと感度は上げられるのですが、経験上、最高でもISO1600までにとどめるように心がけています。このへんは、受光面積の狭いマイクロフォーサーズ規格の辛いトコロです。あまり使ったことがないのですが、フルサイズのカメラなら、面積比は約4倍ありますから、理論上はISO3200とか6400まで上げられるでしょう。

高感度ノイズをソフトで軽減できる時代が到来。

PhotoshopのCamera Rawでの「ノイズ軽減」例
PhotoshopのCamera Rawでの「ノイズ軽減」例

また最近のPhotoshop2023やTopaz Photo AIでは、高感度撮影のノイズを消す機能(ノイズリダクション)が導入されています。

左図は最新のPhotoshop 2023の「Camera rRaw」に新搭載された[ディティール]→[ノイズ軽減]→[ノイズ除去]ボタンで表示されるダイアログの一部。「適用量」を調整してノイズをAI機能を利用しての軽減してくれます。

ところで、後処理でノイズリダクションを前提にした撮影、(特に今回のように高感度で撮影した画像)は、RAW撮影を推奨します。RAWは16ビット、JPEGは8ビット画像と呼ばれていて、最大の違いは、JPEGよりもはるかに階調(グラデーション)の細かく、なだらかに記録されている点です。ただし、RAWの保存容量は、JPEGの数倍大きいのが欠点ではありますが、その分、こういったノイズリダクション調整時にも余裕をもって細かい調整が可能なのです。

徹夜となり「半遭難」。五井での撮影を大反省。

やっとたどり着いた五井駅。始発はまだまだ。
やっとたどり着いた五井駅。始発はまだまだ。

─とまぁ、そんな諸々のことを考えながら、格闘しながら、撮り続け、気付いたら2時をまわっていました。当然、電車はありません。何十年ぶりかの徹夜確定です。真冬でしたが、この日はたまたま偶然にも、寒さが控えめで助かりました。小雨も少しありましたが、全てフェイントみたいなレベルで済みました。

ただ、すべて「たまたまの幸運」、「奇跡」だったのです。もし気温がもう1~2℃でも低かったら、地獄のような行軍になったところでした。始発まで時間があったので、このあと蘇我へ(歩きで!)向かおうかと、一瞬考えましたが、さすがに余力はもう残っておらず、素直に五井駅へ戻ることに。

1時間以上歩きました。途中自販機の汁粉を買って飲み、少し立ち直れました。あとは震えながら4時半まで駅近くの公園のベンチで過ごし、始発で帰宅。なんとか長らえることができました。しかし、もう徹夜はこりごりです…。反省…。

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Posted by katzhal