川沿いにずっと続く、秦野市の桜並木を撮る。

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秦野市の桜と菜の花。

2023年3月27日神奈川県秦野市秦野市水無川にて撮影

水無川に沿いに咲く数百本の桜並木。

道路沿いの水無川の桜。
道路沿いの水無川の桜。

神奈川県秦野市(はだのし)の水無川(みずなしがわ)の川原です。桜はソメイヨシノや、しだれ桜、おかめ桜を含めると、川沿いに600本も並んでいるとのと。この街の桜の存在を知ったのは、なんと撮影の前の週。SNSの広告でした。ただし、私はそれ以前に「関東で、川沿いに何百本も桜が咲き誇る街があるらしい。」という話をどこかで聞いたことがあったのかもしれません。

3月27日に行ってみることにしました。ただ、タイミング的にまだ少し早いような気がしました。私の千葉の地元では3月25日すぎから、確かに満開となりましたが、なんとなく「まだ、早いのでは?」と、そんな気がしたのです。またお天気も、雨ではないものの、曇りがちとの予報でした。「行くべきか、行かざるべきか…。」だいぶ迷いました。

「青春18きっぷ」を使いこなす。

青春18きっぷ。使用時にスタンプを押してもらう。
青春18きっぷ。使用時にスタンプを押してもらう。

しかし私はこの時(3月27日時点で)「青春18きっぷ」を買ってしまっていました。このきっぷは、期間終了の4月10日までに絶対に使いこなさなければなりません。この秦野市を含め、少なくとも往復2500円以上の交通費の場所へ行かないと元が取れないのです。しかも計5回も…。

「青春18きっぷ」は、1枚で12,050円。「青春18」という名前ですが、若者専用というワケではありません。期間中であれば、年齢に関係なく5日間全国のJR区間で使える超お得なきっぷです。改札でスタンプを捺してもらったら、その日中にJR駅の行けるところまで。早朝に関東からスタートすれば、深夜には関西までたどりつくことも可能です。スタンプは5回分のスペースがありますから、頑張れば、日本一周は無理でも、縦断や半周はできそうです。

ただし使用期間は「春」「夏」「冬」の3シーズンのみ。それぞれ1ヶ月程度しかありません。今年の春の「18きっぷ」は3月1日~4月10日までが乗車期間でした。ただし格安な反面、新幹線などの特急には、特急料金を追加しても乗車できないというルール、つまり「普通・鈍行・快速ルール」となっています。使用期間は連続使用でも、分散して使用することもできます。

意外にも高地だった秦野市。

3月27日に秦野市へ向かうことにしました。スケジュール的にこの日しか動けなかったのです。東京駅を7時前に発ち、国府津(こうづ)、御殿場、松田駅と乗り換え、最後は小田急小田急線で新松田駅から渋沢駅に9時過ぎに着きました。

到着してすぐに「あれ?予想以上に寒い…。」と感じました。呑気なことに、向かう電車の中で気付いたのですが、秦野市の西側は、箱根の山々が、北側には丹沢山といった高地に囲まれた場所だったのです。案の定、渋沢駅の標高も163mもある場所なのでした。 寒いはずです。地元の千葉が暖かくなっていたので、ついライトダウンジャケットは着てきませんでした。今日はやや薄手のジャケットです。「まぁ、歩きまわれば、暖かくなるんじゃないか…。」と、考え直し「秦野市カルチャーパーク」を目指し歩きはじめます。

水が綺麗。ゴミも無い。美しかった水無川。

来場客が多いのに、ゴミが全くない。
来場客が多いのに、ゴミが全くない。

30分ほどでカルチャーパークに着きました。この公園と同時に、水無川の川原が開けていました。あぁ、やはり少し来るのが早かったみたいです。桜は7〜8分咲きといったところでしょうか。まずは上流へ歩いてみることにします。しばらくすると、桜と菜の花で埋まった岸を見つけました。菜の花は野生のようです。奥には箱根の山々がそびえて、ところどころ霧のような雲に包まれていました。

水無川の水は澄んで実に綺麗でした。ただ水温のせいなでしょうか、魚は泳いではいませんでした。釣りをしている人も全く見かけませんでした。そして水の綺麗さ以上にゴミの無さに驚きました。他の川ではしょっちゅう見かける缶やペットボトル等のゴミを全くと言っていいほど見かけなかったのです。これほどゴミの無い川は本当に珍しく、素晴らしいと思いました。

水流をぼかして撮るには。

左:通常撮影、右:ライブND撮影。
左:通常撮影、右:ライブND撮影。

右図のように「水流をぼかして撮る」には、シャッタースピードを低速にして撮る必要があります。シャッタースピードは1秒〜2秒あたりです。

ところが低速にすると、カメラのF値(絞り)を、うんと絞って、ふだんはあまり使わないF16とかF22にする必要が出てきますが、それでもスローシャッターにならない場合があります。

これは「撮影場所がまだ明るすぎる」からなのですね。こういった時には「NDフィルタ」か、あるいは「ライブND」機能を使って、「撮影場所が暗くなった」ことにすれば「スローシャッター」にできます。「NDフィルタ値」は32〜64あたりでしょうか。

図版右例の場合「ND値:32/シャッタースピード:1.6秒/F:9.0/ISO:100」で撮影。

NDフィルタとは。

通常のフィルタとNDフィルタ。
通常のフィルタとNDフィルタ。

こういった場合、「NDフィルタ」というものをレンズ前に装着して撮れば、人の往来を消して撮れます。これの外見は、濃いサングラスみたいなフィルタです。

ND4〜ND1000まで色々なレベルがありますが、数字が大きいほど光を遮る効果が高くなります。ND4で光量は1/4、ND32で1/32となりますから、この倍数分シャッタースピードが長くなるワケですね。

一例をあげてみましょう。前述の水流の場合、センサー感度のISOを100に下げ、絞りをF9にしてみましたが、それでもシャッタースピードは1/20秒(0.005秒)でした。ここでNDフィルタの32を装着します。すると「1/20秒(0.005秒)×32倍=1.6秒」と、シャッタースピードをうんと遅くできるのです。これ位のスローなシャッタースピードだと、激しい水流は煙のようにかすれて撮れるワケです。

また私のOM-1の場合は、「ライブND」の機能を使えば、レンズにNDフィルタを装着しなくてもND64までは可能です。理論上はシャッタースピードが1/64まで遅くできます。ただし、こういったND撮影では、「NDフィルタ」でも「ライブND」でも、非常に遅いシャッタースピードになってしまうので、ブレを防ぐため、なるべく三脚に固定して撮影するのを推奨します。

環境保全の秘密は、秦野市民の意識レベルの高さかも。

さて、日本の河川は公害が社会問題となった70年代に較べれば、どこも総体的にかなり綺麗になってきているとは感じています。それでも缶などのゴミはまだまだ見かけてしまうのが普通です。水無川のあまりの綺麗さに、疑い深い私は「何か裏で特別な清掃作業などを、大掛かりにやっているんじゃないか?」と勘ぐってしまいました。帰るまでにそういうところを見つけたかったのですが、これは突き止められませんでした。

水無川の場合、来訪客は少ないどころか、けっこうそれなりにいたのです。街の規模も大きく感じました。なのに、どうしてここまで綺麗なのでしょう?きっと何か秘訣があるはずなのですが…。

そういえば川の周辺には「ゴミ箱」を全く見かけなかったことに、帰宅してから気付きました。すでに秦野市では、来訪客の「ゴミの持ち帰り」を徹底できている証なのかもしれません。この流れは都心の鉄道各社が駅のゴミ箱を撤去してる流れとも共通します。設置していると、あまりにも「家庭ゴミの破棄」が多いので、やむをえず撤去せざるを得なかったとのこと。今後も撤去は増えていくでしょう。

秦野市の場合、この川を美しく保てている秘訣は一体何なのでしょうか?市民の皆さんの日ごろの意識のせいでしょうか?個人的には、もちろんそれは大きい理由のひとつだとは思うのですが、他にも行政の皆さんや関連団体の皆さんの人知れない活動もきっとあるのでないかと考えています。こうした努力が川の美しさに反映されているとしたら、本当に素晴らしいことです。その秘密をぜひ知りたいなあと思います。