首都高のモンスター、 箱崎JCTを撮る。

箱崎ジャンクション,Hakozaki Junction,Highway,P4140275
箱崎ジャンクションの一部。これでもほんの一部。

2019年4月14日0:59東京都中央区日本橋箱崎町42箱崎ジャンクションにて撮影。

「インセプション」のディカプリオの心境に…。

箱崎JCTを逆さにした画像
箱崎JCTを逆さにしてみた画像

このカットの撮影のあと、私はあらゆるジャンクションを撮っていますが、この「箱崎ジャンクション」ほど、巨大で複雑怪奇、奇妙奇天烈な所にはいまだに出会えていません。とにかくずっと撮っていても、「どうやって作ったんだ?」、「何がどうなっているんだ?」という思いが、頭の中で繰り返されていました。

宙に浮いた道を撮りながら、ずっと眺めていると、実は天地が逆で、自分が天の側にいて、ジャンクションの方が地の側にひっくり返っていて…。という不思議な妄想が浮かびました。あ、それは映画「インセプション」(2010年公開、監督:クリストファー・ノーラン、主演:レオナルド・ディカプリオ)の影響かもしれません…。

図版の画像は、わざと逆さに配置してみました。案外違和感が無く見れてしまうことに自分でも驚いています。これは、箱崎ジャンクションがあまりに立体的に交差しすぎていて、人間の「次元」の概念を超えてしまっているからではないでしょうか。

「四重構造!」のジャンクション。

三重構造なのか、四重構造なのか。
三重構造なのか、四重構造なのか。

ここは昭和55年(1980年)に開通した、首都高速6号向島線と7号小松川線と9号深川線の3つが集中した首都高でもダントツの規模のジャンクションです。通常こういったジャンクションは、二階層化した立体構造で分岐されますが、なんとここは「四重構造」なのです!人間が造ったとは思えない「複雑怪奇」の極地でした。

さらに平成6年(1994年)から約4年をかけた改良工事で分岐路が追加設置され、より複雑化しています。実際、私も数回通過したことがありますが、渋滞でうんざりしたり、F1レースみたいな混雑に巻き込まれたり、インターを降り損なったり…。と、まったくいい思い出がありません。

日本には「初見殺しのインターチェンジ」というものがいくつかあるそうで、当然ここもランクインしています。他には「名古屋南ジャンクション」とか「新保土ヶ谷インターチェンジ」とか「垂水インターチェンジ」があげられます。

撮影の日、私はここの下に始めて来た時、口をあんぐりと開けるしかありませんでした。下からの眺めは想像を絶していました。とにかく度を越した「絡み具合」なのです。道は左右に分かれているだけでなく、更に上から下から立体的に、これでもかと分岐しています。

「こんな巨大な道を、何本も空中に通せるものなのか?通していいのか?」と、目の当たりにしたものが信じられませんでした。iPhoneのマップを見ながら指でたどってみても、いったい何本の道があって、何車線がどこからどうつながっているのか、まったく把握できませんでした。「今のクルマって、空飛べたっけ?」と、とんでもない勘違いまで起こしてしまいそうでした。

しかしこの深夜でも、上の道のすべてにクルマが走っているはずです。乗用車のみならず、トラックやトレーラーまで!下からはクルマそのものは見えませんが、ときどきヘッドライトが漏れてきたり、エンジンやブレーキの轟音が鳴り響いてくることで確実に何台も走行していることがわかります。

ところで、ここのトレーラーのブレーキ音が、とても不快であることに気付きました。一説に「エアブレーキのブレーキ鳴き」というものらしいです。何か地の底から締めつけられる様な、妙に乾いた「コォ〜〜ッ」っという音なのです。ジャンクションのカーブに合わせて走ると、あんな音になってしまうのでしょうか?音域も、なんだか人間の耐えられるヘルツ数を超えていると感じました。確実に停るため、制動させるため、やむを得ないのかもしれませんが、あの音、なんとかできないものでしょうか…。

道路が血管?「ミクロの決死圏」みたい…。

箱崎ジャンクションの雄姿。
箱崎ジャンクションの雄姿。

しばらく撮っていると、この道路群が「血管」のように見えてきました。身体をミクロ化されて、「誰かの身体の中へ送り込まれてしまった!」という錯覚さえ感じるほどです。人間が「赤血球」ぐらいのサイズになれば、こんなふうに見えるのかもしれません。

そういえば、でもこういう設定は、SF映画「ミクロの決死圏」(1966年公開、監督:リチャード・フライシャー、主演:スティーヴン・ボイド)や「インナースペース」(1987年公開、監督:ジョー・ダンテ、主演:デニス・クエイド)を思い出します。(でも、元祖のアイディアは手塚治虫先生の漫画にあるという説もあるのですが…。)

ところで、「ミクロの決死圏」は、「ターミネーター」のジェームズ・キャメロンがプロデュース、「インデペンデンス・デイ」のローランド・エメリッヒの監督でリメイク作が進行中だそうです。CGならではの超リアルな映像を凄く期待してるんですが、最近作の「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」と「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」が、けっこうコケましたからね…。ちょっと心配です。

「仕事」ではないぶん、「バリエーション」が求められる。

この首都高の下に潜り込んでみる。
この首都高の下に潜り込んでみる。

さて、今回は仕事の撮影ではありませんでした。仕事ならクライアントから「6号向島線と7号小松川線の交差具合が強調される様に〜」などと、細かく指定される場合があるので、下調べやロケハンで、正確にその地点やアングルを見つけておく必要があります。

ただ、今回は幸いにもそれは全く意識しなくていいのです。気ままに眺めてみて「このジャンクションならでは。」とか「ここが魅力的!」というところを、自分の主観で見つければいいのです。たしかに面白く、やりがいもあるのですが、相手は巨大で、勘所は膨大にありました。そのぶん、バリエーション豊かに撮らなければなりません。

10m動いて中へ入ると、もう別世界。
首都高の下へ10m動いて入ると、もう別世界。

「信号手前の舗道から撮ってみたものの、横断歩道の向こう側に渡ると、また全く違った構図に変わってしまった」─というケースはもう当たり前。なので「また更に交差点を曲がって渡ってみて撮ってみる」─ということの繰り返し。同じ交差点の横断歩道をロの字形にぐるぐるまわり、1ヶ所だけで30~40分かかってしまいました。巨鯨を相手に、挑む漁師みたいでした。「何本銛(もり)を撃ったら、コイツを倒せるんだ!」みたいな心境です。(でも、やめられないんだよなあ…)

結局この日の夜も、許される時間と体力のある限り歩きまわり、朝まで撮り続けてしまいました。

夜景 - Night view,建築 - Architecture

Posted by katzhal