2019年の旅。立体駐車場のモノリスを撮る。

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朝陽が差し込まれた立体駐車場。

2019年12月29日07:36 海に面した某地方都市の立体駐車場にて撮影。

立体駐車場の三階から朝陽を撮ろうとしたけれど…。

別アングルから。チャンスは5分程度しかない。
窓部に近づくと防鳥ネットが張られていた。

師走の早朝、この立体駐車場に迷い込んでしまいました。ここに着くまでは、暗いうちから動き始める漁港を撮り、少し一段落したところでした。そろそろ日の出の時間です。「昇ってくる朝陽を、いいアングルで撮れるところは…。」と見渡しました。この駐車場の3階あたりなら、見晴らしも良さそうです。しかも古くて使い勝手が悪いせいなのか、数台しか駐車されておらず、誰もいませんでした。

ところが、いざ実際に中へ入ってみると、朝陽を撮る期待はすぐ裏切られました。フロアの境目(ビルの窓にあたる部分)は、鳥の進入を防ぐための「防鳥ネット」が、すき間なく張られていたのです。

実に念入りに張られていて、レンズを差し込むすき間さえありません。手で少しめくることさえもできませんでした。港に近いので、かもめ等の海鳥の出入りがきっとかなり激しいのでしょう。

「ここからの朝陽は無理だな…。他をあたるか…。」と考えましたが、残念ながら、日が昇ってくるまでもう時間が無いことに気付きました。駐車場からはすぐに出られるとしても、建物や船に邪魔されず、朝陽を撮れそうな代わりの場所を見つけられる時間はもうありません。不覚でした。

車止めが「2001年宇宙の旅」のモノリスのよう。

朝陽を背にした逆方向からのカット。
朝陽を背にした逆方向からのカット。

まごまごしているうちに日が差してきました。ところが、あれ?なんということでしょう。車止めからすごく長い影が伸びはじめました。車止めは10数センチの高さしかありませんが、立体駐車場の3階だから、冬の太陽の光がほぼ水平に差し込むのでしょう。それで、これほど長い影を描かれるのです。

立体駐車場という人工の建築、冬の低い太陽光線、日が差した方角、あらゆる偶然が重なって、貴重な光の演出がはじまりました。「モノリスみたいだ…。」一瞬、私は映画「2001年宇宙の旅」の冒頭で、謎の石碑におびえる類人猿のように立ちすくんでしまいそうになりました。(同時にオープニング音楽の「ツァラトゥストラはかく語りき」が、聞こえきそうな気がしていました。)

が、この瞬間を逃してはなりません!とにかく「写真」として捕らえておくことが、今の私の至上命題です。経験上、朝陽と夕陽がらみの撮影は、時間が本当にわずかで限られていることは、暢気な私もさすがに学習しています。しかも、東側に駐車している車は全くありません。またとないチャンスかもしれないのです。

いろんな高さで撮れるバリアングルモニタ。

バリアングルモニタでのローアングル撮影。
バリアングルモニタでのローアングル撮影。

撮影アングルを変えながら、(特に高さを変えながら)どんどんシャッターを切っていきます。そのうち、地面だけでなく、天井のディテールもかなり面白いことに気付きました。構図に天井も一緒に収めるとなると、ローアングルが多くなってきます。こんな時はOM-1の「バリアングル式」モニターは、本当に威力を発揮します。(私の場合、縦アングルでもかなり撮るので、縦の構図にまわせないチルト式モニターのカメラは候補から外しています。ただNikonのZ9やZ8のように「4軸チルト式」といったものも出てきましたね。ちょっと気になっています。)

こんなシーンでは「逆光をうまく捕らえる」というのも、大きなポイントになります。と同時に「影の長さ」や「光と影のコントラスト」も、どう撮ればいいかを判断しなければなりません。短い時間のあいだに、どこから、どの高さから、どの構図で撮ればいいかをすばやく判断するのです。バスケットボールのプレーヤーと同じです。「ジャッジをすばやく」しなければなりません。うろたえている時間は無いのです。間違っているかもしれませんが、とにかくドリブルで進んでみたり、パスしたりするしかありません。シャッターを切り続けるしかないのです。

「ブラケット撮影」で多段階露光で撮る。

Photoshopの「HDR Proに統合」画面。
Photoshopの「HDR Proに統合」画面。

ただ、今回のような撮影は「明暗のコントラスト差」が大きかったので注意する必要がありました。暗い天井側を明るさの基準にしてしまうと、床側の方が明るく飛んでしまう場合があります。かといって、床側を明るさの基準にしてしまうと、暗い天井側が真っ暗になってしまい、ディテールが黒くつぶれてしまう可能性がありました。

こんな時私は、ワンシャッターで明るさを数段階に変えて連続撮影できる「ブラケット」撮影をしています。私の場合は、「ブラケット」撮影で5段階で撮っておき、後日Photoshopの「HDR ※1合成」で明るい(ハイライト)部分も暗い(シャドウ)部も見えやすい1枚画像に合成しています。

この設定は個人的に多用するので、私はメニューからではなく、上部の「+/-」ボタンを押せば、すぐ動作するようにカスタマイズしています。

※HDR:High Dynamic Range(ハイダイナミックレンジ)の略称。私流の勝手な意訳ですが、この場合「明るい部分も暗い部分も見えやすい画像」とイメージしてもらえばいいかと思います。

またはOM-1場合は、カメラだけで「HDR撮影」後、することも可能です。こちらは多段階露光で一気に複数連続撮影したあと、その場でカメラ内で1枚の画像に合成されます。ただ、私はあとで部分的に明るさを細かく調整したい場合が多々あるので、あまりこの設定は使っていません。