天国からの光「光芒」を撮る。
2023年2月17日07:15千葉県柏市手賀沼西岸にて撮影。
光芒(こうぼう)を撮る天候とは
雲間から太陽の光がこぼれ出た「光芒」の場面です。雲の割れ目から放射されるこのような光を光芒(こうぼう)と呼ばれています。こんな情景に出会ってしまうと、雲のむこうから誰かに誘われているような、呼ばれているような気持ちになってくるから不思議です。
今回のカットでは、光芒の「光」や「雲」だけでなく、引き気味の位置から撮ることで「ススキの大地」を下部に収めてみました。逆光によるススキのシルエットが美しい構図を作り出してくれています。ススキの茎がまるで天へ伸びる人びとの手のようにも見え、神秘的な雰囲気を醸し出してくれました。
左のカットは、夕焼け時の光芒です。光芒が日中のまっ昼間に発生することは、まず無いでしょう。
天候は「雨でないこと」はもちろんですが、「快晴でないこと」も重要です。つまり、晴れてはいるけれど、そこそこ雲も出そうな、「朝焼け」か「夕焼け」時が狙い目となります。あくまで私の場合ですが、季節は冬の方が出会う確率は高いような気がしています。
光芒を撮るためのカメラ・レンズとは
「光芒」を撮るためのカメラですが、「ミラーレスカメラ」で「手ブレ補正機能が強力」なものをオススメします。現在は各社ほぼすべてが、「ボディ内手ブレ補正機能」タイプのものが支持されていますね。これは朝・夕時の暗い時には、シャッタースピードが遅くなり、手ブレがちになるのですが、それを防ぐためでもあります。
ただし、センサーサイズはフルサイズでなくてもいいかと思います。3分の2ほどのAPS-Cであれば、取り付けたレンズは×1.5〜1.6倍の画角となり、マイクロフォーサーズ(私のOM-1がそうです)であれば×2倍となります。マイクロフォーサーズの場合は、ボディ+レンズでも全体的にコンパクトにまとまり、価格(特にレンズ)が廉価で助かります。
レンズは35mm(フルサイズ)換算で、100-400mm位のズームレンズが便利かと。このカットはマイクロフォーサーズの12-200mm(フルサイズ換算で24-400mm)で撮りました。あらゆるケースに対応できる万能画角のレンズです。
天気予報を参考にはするけど「賭け」ではある
この日は「朝陽を撮ろう」と出かけました。天気予報では「曇り時々晴れ」だったと記憶しています。こんな予報の日には、タイミングが悪いと「完全な曇り」になってしまい、朝陽に出会えないことも、かつてありましたが、それはもう「時の運」です。これくらいの天候の時の方が、何かと面白いカットが撮れることも多いのです。そこは「賭け」なのです。今回は朝陽は拝めなかったものの、その代わりにこの「光芒」に出会うことができました。
不思議なもので、季節を問わず雲ひとつ無い「快晴の日」の朝陽や夕陽の写真は、あまり面白い構図にはならないケースが大半です。映画や芝居と同じで「主役」だけが目立つのではなく、「助演や脇役」にあたる「雲」や「木々」とのからみがあってこそ、面白い写真になるのです。
実は私は「さぁ、光芒を撮りに行くぞ。」と出かけて撮れたことは一度もありません。朝陽や雲を撮るにしても、雲間から光が差し込んで「光芒」になるかどうかは、来てみないとわからないのです。もちろん、天気予報はある程度手がかりにしますが、実際その日の「太陽」と「雲」が、どう演じてくれるのかは、「運」次第なのです。ただ「勘」も大切な気がしています。これは経験を重ねてゆくしかないのでしょうけれど。私が、これまで何度か「光芒」の写真が撮れたのは、たまたまです。晴天の朝陽を撮ろうとして曇ってしまったり、水面や植物を撮ろうとして偶然出くわしたにすぎません。
光芒を撮る秘訣のひとつ、「柔軟さ」
「光芒」を撮る機会に出会えるには、まずは出かけるマメさも大切ですが、それ以上に「あ、今はこの光芒を撮っておこう!」と、他の何かを撮っていても、節操なくアタマを切り替えてしまう「柔軟さ」が一番大切かもしれません。なにせ「光芒」が出会える機会と時間は限られているのですから。
「光芒」を撮影するたびに、自然が持つ神秘的な力を強く感じます。「光」と「自然」は、静かに穏やかに、でも小刻みに美しい光景を創り出しているのです。朝陽の色や光の加減が変化する度に、美しい光景が次々とバリエーションを変えて現れるのです。
太陽が雲から差し込むこのような光芒の瞬間には、ススキの茎が細く、鬱蒼とした様子が美しくなり、とても静かな雰囲気を醸し出してくれました。さらに光芒が静かな水面に反射して、より神々しさを感じさせる光景になりました。
今後の光芒撮影には、「タイムラプス」が必須かも?
光芒の動きは、オーロラほどの早さではないものの、それでもゆっくりと変化し、形や色を確実に変えています。それはほんのひとときです。逃さないように撮っていかなければなりません。もしこの動きを、もっとよりこまかく長く捕らえるのなら、「タイムラプス撮影」が向いているのかもしれません。「タイムラプス」は数秒刻みで静止画を何百カットも撮り続け、最終的には数十秒〜数分程度の動画になります。現在のミラーレスカメラにあらたに加わった機能のひとつです。
ただ、この撮影の場合、三脚が必須であること、撮影を始めたら、画角や構図を途中で変更できない等も問題があります。私は東京ゲートブリッジで、夕陽を「タイムラプス」で撮ろうとしたところ、アングルと画角の判断を誤ってしまい結局失敗してしまったことがあります。「タイムラプス」には、本当に憧れているのですが、なかなか悩ましいところではあります。ただ、もし光芒がタイムラプスで撮れたら、動画として4K (横幅:3840ピクセル)で再生できるのです。まさに「写真が動く」のです。素晴らしい時代になりました。
※なお、私の使用しているOM-1のOM SYSTEMでは、「タイムラプス撮影」を「インターバル撮影」と呼んでいます。
自然が人間に「癒し」や「エネルギー」を与えてくれる大きさは底知れないものがあります。またこんな「光芒」に出会いたい、見てみたいと考えていますが、次に出あう時の「光芒」の姿は、仮に同じ場所、同じ季節でも、この日とは違った色、光、形で私を迎えてくれるのでしょう。
ただ、せっかくなら、違う場所、違う季節の「光芒」に出会いたい、見てみたいというのが本音です。もっと高い場所から、もっと広かったり、狭かったり、深い場所なら、一体どういう見え方になるのでしょう?沼ではなく、川だったら?湖、いや海だったら?夏だったら、朝ではなく夕暮れ時だったら?想像は果てしなく広がっていきます。
これからもきっといろんな「光芒」に出会えるでしょう。その時も、穏やかな気持ちでシャッターが切れるように、いつもカメラを携えて歩くことを心がけています。